●舞台の感想:
村岡伊平治という人物が歩んだ波乱万丈の人生を、2時間45分(休憩15分含む)の中に凝縮したお芝居、といった印象があります。
以下より、大体のあらすじ。
−第一部−
大志を抱いて香港へ行くも、挫折。床屋のボーイとして住み込みで働く中で、ある日恋慕していた昔の女性と再会する。
しかし彼女は、イギリス人の妾に身をやつしていた。彼女を説得し『一緒に内地へ帰ろう』と約束するも、直後に軍部から密偵として半年間の満州行きを命じられる。
役目を終えて帰還した彼だったが、軍部からの褒章は日章旗一つだけであり、想い人も行方知れずとなっていた。
一年後、連れて来られて身も心もボロボロになっていく女郎達を日本へ帰そうと奔走するも、領事館は取り合ってくれない。
手持ちの金も底をつき、人望をも失っていき、心身ともに追い詰められていく中で…彼は一つの答えに行き着いた。
それは─『自らが南部開発の為の人柱となり女を売ろう、国家発展の為の露払いになろう』というものであった。
−第二部−
年月が経ち、伊平治はシンガポールでも名うての経営者にのし上がっていた。
前科者には精神論と商売のいろはを説き、対抗する組織は排斥し、内地から女をかどわかしては言葉巧みに利用する。
その様はまさに『悪徳』といってもいい。だが彼はそれを『前科者が真人間になる為の通過儀礼だ』と一蹴する。
しかし律儀にも、悪事を働く前には天皇陛下に『これから罪を犯すのだから』と敬礼する。
『お前達が働いて家族に金を送れば家族が潤う。家族が潤えば国が潤う』と吹聴する彼の行動は、実に矛盾に満ち溢れている。
だがそれは彼なりの『国家への忠誠』の顕れでもあったのだ。
ある日、南洋視察に来ていた伊藤博文が彼の店を訪れる。
極上の茶菓子に女中、格別のもてなしを受け満悦の表情を浮かべる伊藤を前に、伊平治は熱弁する。『我々も南部開発に寄与する臣民なのだ』と。
だが伊藤は、その熱弁を歯牙にも掛けなかった。彼からしてみれば、伊平治もまた一介の『外地へ渡った棄民』でしかなかったのだ。
誰も居なくなり静まり返った空間で、伊平治は独白する。『我々は陛下のお役に立っているのですか』───
とまぁこんな感じでした。
伊平治のやってる事は現代の法律的にも倫理的にも『悪徳』でしかないのですが、それでも当時の過酷な環境下で皆が幸せになれるように、何より『国家』の為に─といったところにブレが無く、一概に責めることが出来ない部分もあり。
何か『
理解は出来ても納得は出来ない』的なものがあるというか。
それが伊平治が常日頃持っていた『矛盾』なのかなー、ってことを考えると自分達が生きている上で抱える『矛盾』にも繋がっているように思えるし。
中々に考えさせられるお芝居でした。(あんましまとまっていなくてスミマセン:汗)
堅苦しいお話はここまでにして。
小山さんは今回も素晴らしい演技を見せてくれました。シリアスな中にも小心者の表情を覗かせるあたり、素に近いかな?と思った部分もありましたけど。(笑
上原中尉(演:林宏和さん)や豚吉(演:川井康弘さん)、しお子(演:井上薫さん)を始めとする女性達との絡みも含めてテンポが良く、終始目が離せない展開だったのも良かったです。
でもいきなり男連中が全員揃って『君が代』(しかもわざと音程を外してる)を歌い出した時には一瞬何事かと思ったさ。(笑
あとは片山(演:西川竜太郎さん)はどっかで見た事あるようなキャラだな…って思ってたんですが終演後に
保毛太郎侍が頭に浮かんで『あぁ、デジャヴってこういうことか』と一人納得。(ぉぃ
●舞台終了後には…:
いつものように小山さんとのサイン会&撮影会&握手会が催されました。
パンフの表紙にサインとステッカーを懇切丁寧に貼っていただき、握手までしていただいてホントに感無量です。
小山さん、お忙しい中本当に有難うございました!