<評価基準>
■ストーリー … 脚本、設定も含めて、破綻がないか。テーマ性を貫けていたか。そしてオチがしっかりしていたか等。
■キャラクター性 … キャラクターの魅力。キャラクターと声優の声のイメージが合っているか等。
■画 … キャラクターデザインに忠実か。作画の破綻、崩壊がないか。よく動いてるか等。
■演出 … 声優の演技。盛り上がりを作れているか。BGMや挿入歌が効果的に使われているか。カメラワークや構図の工夫。各話の引き等。
■音楽 … OP・EDが作品の雰囲気に合っているか。BGMや挿入歌の評価等。
■総合評価 … この作品を面白いと思ったか、また満足度。他人に薦められる作品か等。
※評価基準は0〜5の各5点満点。
<『とらドラ!』の評価>
■ストーリー … 5点
年頃の高校生が繰り広げる等身大のストーリー、ですね。
本当に、愚直なまでの青春狂騒曲。
仲の良い友達同士がおしゃべりしたりバカやったり、お互いの感情をぶつけ合ったりできるのって学生時代における青春の醍醐味だと思うんですよ。
あんまり誇れる学生時代を送っていない自分が言うのも何ですが(爆)、この年頃は何でも出来ると思い込んでる『怖いもの知らず』な面があって輝いているというか。
だからこそ、中盤〜終盤に掛けて登場人物達が抱える問題に直面し、将来を見据えるようになった時、急に何かにぶつかった様な感覚に陥る。
大河や竜児は共闘関係がいつしか恋愛感情に変わっていった事への戸惑いや複雑な家庭環境、みのりんや亜美は自身の恋の重荷、北村は狩野先輩への想い…といった具合に。
そうした中でも、悩み抜きぶつかり合い支え合った末に各々の結論を出し、前を向いて歩いていく、自分の将来を見据えて巣立っていく───そんな所に、『子供』から『大人』への成長といったテーマが良く表れていたと思います。
ストーリー構成も、後半における以下の流れが秀逸でした。
・15〜16話で大河の北村への想いが決着
・17〜19話の間に竜児と実乃梨の関係に少しづつ溝が出来る
・21話での亜美と実乃梨の口論が切っ掛けで、図らずも大河の本心を竜児が聞いてしまう
・以前の関係には戻れなくなった22〜24話で進路や家庭環境における問題が表面化。何もかもが嫌になった竜児と大河はその場から逃げ出す
・竜児と大河は駆け落ちしようとするが思い止まり、竜児は祖父母に頭を下げて泰子との関係を修復
・そして最終話、大河も自分の家族との和解を決意し実家へ。竜児やクラスの仲間もそれを暖かく受け入れる
欲を言えば何故あそこで竜児と大河は思い止まったのか、という説明が欲しかった気もしますがまぁこれは個人的な意見ということで。
結局作中で彼らは高校を卒業しただけで明確な進路を示されませんでしたが、こうした背景を考えれば結末は十分に描き切れていたのでは無いかと。
■キャラクター性 … 4点
竜児と大河は性格は真逆ながら、複雑な家庭環境を抱えている事や大人になり切れていない子供という点で実は非常に似た者同士なんですよね。
お互いの強さと弱さを理解し合っているからこそ、共闘関係が恋愛関係に変わるのも自然だと言えるでしょう。
でも『虎と竜は互いに寄り添い合う』って実際は逆の意味じゃなかったっけ?とツッコミたかったのは秘密。(笑
# 『竜虎相搏つ』で力関係の均衡した二者が勝負する、って意味だったような。
サブキャラクター達も、
・親友の幸せを願うが故に自らの想いを胸にしまい込んでしまう実乃梨
・『良い子』を演じることにこだわる余り、素の自分を曝け出せず苦悩する亜美
・大好きな狩野先輩の為なら全てを投げ打つ覚悟のある北村
・暗い展開の中でも、底抜けに明るく物語に希望を与えてくれた春田他の2-Cクラス一同
・そして母親の立場から竜児や大河を支え続けた泰子に、生徒のことを誰よりも考え見守るゆりちゃん先生といった大人達
といった連中がそれぞれの立ち位置から物語に華を添えてくれたことも、作品への評価を押し上げています。
# でも中盤で実乃梨が竜児への想いを頑なに否定する場面なんかは、傍から見てるとヒステリーを起こしてるようにしか見えないよね。(苦笑
あと実乃梨の言動や挙動はどう見ても高校生に思えません。本当にありがとうございました。
『ファイトー!一発!』といいひょうきん懺悔室といい丹下段平のコスプレといい、お前は一体いくつなんだと。(笑
■画 … 4点
パステル調の色彩が思春期の眩しさを思わせるエンディングのコンテが好き。
本編もアクションは控えめなものの良く動くし、大きな乱れも無かったように思います。
■演出 … 4点
脚本における心情の描写が丁寧で(割と突拍子な部分もあったけど)、また展開に合わせたコンテにキャストの迫真の演技が加わってアニメというよりは青春ドラマを見ているような感覚でした。
その結果、色々な名場面が生まれたと実感しています。特に最終話は最初から最後まで瞬きする余裕すら無い程だった。
■音楽 … 3点
『プレパレード』が何処と無く
イモ欽トリオの『ハイスクール・ララバイ』(古っ)に似た曲調で、懐かしさの余り思わずニヤニヤしてました。
それ以外は平均的、悪く言えば没個性だったって感じです。作品のイメージには合っていると思いますが。
■総合評価 … 4点
若さゆえの暴走や突拍子も無い行動が鼻につく部分があるものの、失敗を恐れず各々の考えの下で前に向かって進んでいく。
思春期には思春期なりの楽しさや辛さ・考えがあるんだなぁ…というのが作品から伝わってきました。
そういった意味では、自分好みの作風である『
絶望や迷いから這い上がる人間の強さ』を上手く表現できていたと思います。
# 4点なのは、あくまで他の評価項目も加味して総合的に判断した結果ということで。
『学生って色々と面倒臭い』とか『自分の進むべき道が分からない』という学生さんだけでなく、年頃の娘さん息子さんを持つ親御さんにも観て欲しいアニメだなぁ、これは。
『あの頃は若かった…』『自分も皆のように前に進みたい』って気持ちから親子間のコミュニケーションが取れるかも?と期待してみる。
■総合点 … 24 / 30 点
ラブコメもあるが、むしろ思春期における葛藤やそれに絡む人間関係を観て欲しい。(そこに作品としての面白さがあると思うので)
その辺を考慮した上で、学生生活における喜びを見出せない人や年頃の子供を持つ親御さんにオススメしたい作品。