■あらすじ:
以下は
プレスリリースからの抜粋です。
> 吸いたいけど吸えない。吸いたいのに吸えない。
> だって吸ったら僕は、
> 大好きなあの子に2度と逢えなくなっちゃうから・・・。
> とある満月の夜、いや夜中、午前3時の道場のような会議室。
> 部屋には簡素な机とライターとタバコ、そして灰皿が置かれ、1人の看守と、訳ありの秘書、そして、番号で呼び合っている人々がいる。
> それぞれに過去を抱え、禁欲を強いられている彼等は、気がついたらこの部屋に集められていたのである。
> 言わば職安のようなこの部屋の壁には、沢山の求人募集のような紙が貼られている。
> ここでの決まり事はただ1つ。
> 禁欲条件をクリアしたものだけが次の職にありつけるという事。
> それまでは、ここで内職や、道徳に関する審議等をしなければならない。
> 明け方になるにつれ、騒がしくなる室内。
> 夜明けとともに、この部屋から解放される人間が発表される。
> 解放された人間はまた新たに生を受け
> 新しい人生を歩む事が出来るのだ。
> ここは天国の禁欲道場
> 再び生きる喜びを感じる為に
> 生まれる為に
> 未練を抱えた者たちが集う最後の砦。
■感想:
いやー今回も笑った笑った。
そして終盤、『生きる事の意味』を我々観客に問いかけるような台詞の数々に胸が熱くなりましたね。
# そしてそれが、脚本を手掛けた座長の石山英憲さんの持ち味なのだということも再認識。
今回のタイトルにもある『
ストイック(禁欲)』、これが今回公演のテーマにして最重要ワード。
校長に招集され、それまで禁欲に励んできた8人の生徒がたった一つの『卒業』枠を巡って議論を進めていきます。
その過程で、数々の欲望─食欲、性欲、睡眠欲、etc...−が渦巻く笑いありカオスあり(笑)の人間模様が描かれていきます。
最終的にはこの議論自体が不毛なものであり、卒業できる者は誰一人として居ない。何故なら『生』への欲望─劇中では『生欲』と表現─は抑えられないものだから…と結論が出た時、全てのカラクリが明かされることになります。
実は生徒達は既に死んでおり、この会議も魂の状態から『欲』を雪いでもう一度『生』をやり直す−劇中では『再就職』と表現−ための試練。
全てを理解した彼らは、ある一つの決断を下します。それは『生きて普通の生活がしたい』と願う一人の女性の魂を、再び『生』へと導くこと。
そして彼女が再び『生』を受けるのを見届けた彼らは、満足げに会議場を後にしていくのです。
劇の終盤に、とある人物が校長に問い掛けます。『貴方は何故、生き返ろうと思わなかったのですか?』
その問いに校長はこう答えます。『
自分になれるのは、自分しか居ない』と。
即ちそれは、自己のアイデンティティへの欲求。
生き返ってしまえば、また他の誰かとしての人生を送らねばならない。でも自分は自分でありたい、だからそうしない。
それはまさに、自分自身に誇りを持って生きてきた…と解釈することが出来るでしょう。
さらに拡大すれば、『誇り』を持って生きているのか?という、観客である我々に対する一種の問い掛けともいえるのでは無いでしょうか。
残念ながら、自分にはまだ『誇れる』ものが何であるのかまだ見つけられていません。
来るべき時に備えてやり遂げなくてはならない事…
自分の『生きる意味』を求めるのにストイックたれ、というメッセージが作品から伝わってくるようで感慨深いものがありました。
■出演者も頑張ってます:
今回の作品を作るにあたり、石山さんは出演者の皆様に対して『ストイックさを追求せよ』とのオーダーを出したそうです。
そしてその結果が、出演者の演技にも色濃く反映される事になりました。
役名こそ『校長』『1号』『2号』…などといったものですが、その役全てに元ネタが存在しています。
自分が分かったのは以下の通り。(役名【出演者】 → 元ネタ、の順)
・校長【斉藤範子さん】 → 美空ひばり(劇中の歌、終盤の台詞から確定)
・ハナダ肇【伊奈捻勝さん】 → ハナ肇(役名から既に確定、つうか銅像の役だったし:笑)
・マリモン【白石悠佳さん】 → マリリン・モンロー(役名や格好、スカートめくりなどから確定:笑)
・1号【土橋健太さん】 → ジョン・レノン(『マッカートニー』『リンゴ』『ヨーコ』等のキーワードから確定)
・2号【大原研二さん】 → アドルフ・ヒトラー(ちょびヒゲ、『ユダヤ人』『大量虐殺』等のキーワードから確定)
・3号【島村比呂樹さん】 → 太宰治(終盤の台詞から確定)
・4号【大高雄一郎さん】 → マイケル・ジャクソン(肌の色、ムーンウォーク、『ネバーランド』等のキーワードから確定)
・5号【田中千佳子さん】 → ※これだけ元ネタが分からなかった…すいません
・6号【佐藤貴也さん】 → 横山やすし(白髪のオールバックに縁眼鏡、『キー坊(=相方である西川きよし)』等の台詞から確定)
・7号【阿部英貴さん】 → 渥美清(服装や台詞回しがまんま『男はつらいよ』の寅さんだったことから確定:笑)
・8号【沢城みゆきさん】 → 岡田有希子?(『歌手』『学生』『自殺未遂』等のキーワードから推測)
(沢城さんがほぼ素のままだったのを除き)皆元ネタを忠実に演じ切るための試行錯誤を繰り返してきたんだなぁ、ってのがありありと伝わってきました。
特に斉藤さん・大高さん・佐藤さん・阿部さんあたりは似せすぎだろ!って思ったくらい。(笑
大高さんとは終演後にその辺のことを少しお話したんですけど、役作りのために『
THIS IS IT』を観に行ったのだそうで、『似てるって言われてホッとした』と安堵していました。
役者陣のストイックさが舞台の雰囲気にも表れていた印象が強いですね。
こういうのがあるから舞台鑑賞はやめられないのですよ。
次回の公演(2010年2月)も、今から楽しみに待ちたいと思います。